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毛の仕組み

まず、毛の仕組みを知ることが、脱毛の医療を理解することにつながります。

毛というものは、退行期、成長期、休止期の一定のサイクルをもって抜け替わっています。一本一本のサイクルは互いに周囲の毛と調和を保ちながら、固有の周期で行われているといわれています。
毛を作り出しているのは、毛根の下部に当る毛球部にある毛母細胞というものです。成長期には毛母細胞が活発に分裂を繰り返し、毛を構成している数種類の細胞を作り出す重要な役割を果たしています。

体毛が濃くなったり、ムダ毛が増えたりというのは、性ホルモンなどの影響によって毛の色素が増え、硬く、太く、長くなることが原因であり、本数自体が増えているわけではありません。毛包の数は、胎児のときに作られる数で決まります。よって生まれてからは増えない、とされています。

毛は、皮膚の保護機能、保温機能、知覚機能などさまざまな役割をもっていますが、現代の恵まれた生活環境のもとにある人間にとっては、あまり必要性がなくなってしまっています。進化の歴史で体毛が減少していることも、そのことを裏づけているようです。

そのため、体毛はムダ毛とさえ言われるようになり、脱毛が積極的に行われるようになっています。



毛の機能

①皮膚の保護機能
 皮膚の保護機能として一つは、物理的な接触から皮膚を保護するということがいえます。ただ、人間の場合には、体毛の量としては、それ程機能を果たしているとは言いがたいのではないでしょうか。ただし、頭や生殖器周辺など大切な部分に関しては、やはりしっかりと毛が生えています。

②保温・断熱機能
 毛には保温機能と共に断熱機能もあります。髪の毛を短くすると涼しく感じられますし、夏場は直射日光のもとでの頭皮の温度上昇を防いでくれます。

③知覚機能
 感覚器官としての機能が皮膚には多くみられますが、中でも体毛は微妙な変化を感じ取るのに重要な役割を果たしています。毛根部分周辺の神経は、ごくわずかな力や振動を感知するセンサーの役目をしていると言われています。脱毛した人は脱毛していない人に比べると、微小な感覚が低下し、不器用になると言われています。これは人体の非常に繊細で周到な仕組みの驚くべき事例です。

④紫外線防止効果
 紫外線の皮膚への害は盛んに言われていますが、毛にはその紫外線をカットする役割があります。しかし人間の場合、体中にびっしりと毛が生えているわけではないので、他の紫外線対策のほうが有効でしょう。



毛と性ホルモン

ホルモンは、人体のさまざまな機能を調節するもののひとつにあげられます。特に男性と女性の性差に影響を及ぼすホルモンが性ホルモンと呼ばれるものです。これは皮膚や毛に強く関与しています。

テストステロンを始めとする男性ホルモンは、第2時性徴期に男性の体毛を硬毛化させる役割を持っています。女性でも男性ホルモンが多く、その刺激を受けやすい人は硬毛化が進みやすくなります。その逆に、男性であっても男性ホルモンが少なかったり、影響を受けにくかったりする場合には、硬毛化があまり進まない人もいます。

更年期などで体毛が濃くなったりという変化が起こるのも、性ホルモンのバランスの変化によるものとされています。女性の場合、女性ホルモンの減少に対して男性ホルモンの減少が少ないので、そのために硬毛の割合が増えてしまうこともあります。

しかし、性ホルモンの影響の受け方は体の部位によって様々で、眉毛や睫毛のように性ホルモンの影響をほとんど受けない毛も存在します。これを無性毛といいます。

脱毛したいと思う場所は、主に四肢や腋のような部位でしょう。若い女性の場合で、男性のような硬毛が発生している場合、内分泌異常や代謝異常の可能性が考えられます。これは多毛症と呼ばれ、適切な治療により改善される場合もあります。



多毛症・脱毛症

①多毛症

 若い女性で顔や身体に男性の体毛パターンに似た硬毛化が発生している場合、多毛症の可能性があります。原因は副腎や卵巣からのアンドロゲンという男性ホルモンの分泌量が過剰であったり、毛のホルモン感受性が強いことなどが挙げられます。
 治療としては、血中のアンドロゲンを低下させるためにピル(経口避妊薬)などの薬物療法が行われます。しかし、十分な効果を得ることは難しく、特に四肢の硬毛はアンドロゲンの影響をあまり受けていないため、効果が少ないのです。実際には、レーザー脱毛などの脱毛術に頼る方が、迅速に確実な成果を挙げられると考えられています。


②脱毛症

 様々な疾患やホルモンバランスの崩れ、精神的ストレス、栄養障害などによって、正常な毛の発育や周期に異常をきたしてしまう疾患を脱毛症といいます。
 女性にとっての脱毛症は、円形脱毛症や分娩後脱毛症、過激なダイエットなどによる栄養障害などがよく知られています。毛の異常は、体の異常を示すサインとなっていることも多く、気になる場合は早めに専門の医師に相談するとよいでしょう。



毛の再生する仕組み

脱毛の永久的効果を得るためには、レーザー脱毛であれ、電気針脱毛であれ、毛が再生する仕組み自体を破壊する必要があります。
つまり、毛が抜け落ちた後、どこから毛の再生が始まるかが分かれば、その部分の機能を失わせることで永久脱毛が達成される可能性があるのです。

以前から毛母や毛乳頭が毛の再生と関わっていると考えられてきました。しかし、休止期には毛母は消失していますし、毛母や毛乳頭を切断しても毛が再生することは実験で明らかになっています。つまり、皮膚組織のどこかに毛母や毛乳頭を再生させるもの(幹細胞)が存在するということになります。

現在、最も有力な説は、毛包部に立毛筋(鳥肌で毛を立たせる筋肉)が接する部分にある隆起(buldge:バルジ)に毛包部を再生する幹細胞がある、というものです。この部分は休止期にも残っています。ただし、この細胞がどの程度の範囲まで存在しているかは明らかにはなっていません。

今後、この辺りの再生の仕組みが明らかになれば、より永久効果の高い治療が開発されることが期待できます。



レーザー脱毛

レーザーによる毛包部分の組織破壊により、発毛が起こらないようにするのが「医療レーザー脱毛」です。レーザー脱毛の研究は1994年にハーバード大学のAndersonを中心とするグループによって始まりました。1996年にはその理論が確立され、Cynosure社がその理論に適合するレーザー装置を開発、レーザー脱毛の時代がやってきました。1999年にはアメリカFDAが一部のレーザー脱毛機を認可し、「永久減毛」効果を認めています。

レーザー脱毛では、主にアレキサンドライトレーザー、ダイオードレーザーが使用されています。これらのレーザーの波長は、毛包部のメラニンに選択的に反応しやすく、他の皮膚組織には影響が出にくいのです。

特に黄色人種の場合、表皮にメラニンが含まれるため、ルビーレーザーのような波長の短いレーザーは不向きだとされています。
レーザー脱毛は、電気針脱毛に比べて短時間で処理ができ、感染などの心配もありません。ただし、適応部位や体毛の種類に制限があり、レーザー出力や適応を誤ると、火傷や色素沈着などのトラブルも起こりえます。

日本でも盛んにレーザー脱毛が行われていますが、特にエステサロンなどでの不適切な使用によるトラブルも多発しています。レーザー脱毛に詳しい皮膚科医のいるクリニックでの治療が望まれます。



レーザーによる発毛再生機能の破壊

レーザーによる発毛再生機能の破壊はどのように起こるのでしょうか。

発毛再生の仕組みは毛包部分にあると考えられていますから、その部分を破壊する必要があります。脱毛で使用されるアレキサンドライトレーザーやダイオードレーザーは、皮膚に照射するとメラニンと血液中のヘモグロビンに吸収され、熱エネルギーに変化します。このときに毛包周辺の発毛組織をこの熱によって一緒に破壊することができれば、永久脱毛効果が期待されます。そして毛根が破壊された毛は自然と抜け落ちてしまいます。

一方、その他の組織ではレーザー光が吸収されないために、熱エネルギーに変化することなく拡散・減衰していきます。
レーザー脱毛をしても、十分な脱毛効果が得られないこともありますが、これは照射出力が弱すぎたり、毛包にメラニンが少なかったりすることが考えられます。基本的に毛というものは再生能力が強い組織なので、十分に破壊できなければ再生してしまうのです。しかし、出力が高すぎると火傷のような副作用が出てしまうので気をつけなくてはなりません。



レーザー治療

①治療前の準備
 レーザー治療は剃毛した状態で行います。効率よく毛包部にレーザーを照射するためです。レーザーが目に入ると大変危険なので、治療する人もされる人も目をゴーグルで保護します。

②レーザー照射
 レーザーが照射される時間は一瞬、時間にして1000分の数秒から数十秒という短さです。照射時間や出力によって、永久脱毛になるかどうかが大きく影響されますが、強すぎればやはり火傷のような副作用が出てしまうので注意が必要です。
 レーザー照射時には、同時に皮膚を冷却しなくてはなりません。レーザー装置によって冷却法は異なりますが、ジェルを塗布するものと、冷却装置を皮膚に押し当てながら照射するものがあります。冷却装置付きのもののほうが確実に冷却できます。

③レーザー照射後のケア
 レーザー照射後は、軟膏を塗って肌を保護します。当日はレーザー照射した毛包部が赤く炎症を起こすこともありますが、通常は2~3日で消失します。また、当日からシャワーや入浴も可能です。

④レーザー照射後の注意
 レーザー照射後に注意すべきなのは日焼けです。赤みがあるうちに強い日差しを浴びると、その部分がシミになる可能性があります。



脱毛用のレーザー①

まず、ルビーレーザーが挙げられます。
ハーバード大学のAndersonらの研究においては、メラニンへの吸収率の多いルビーレーザーが使用されました。ルビーレーザーは皮膚内にメラニンの少ない欧米人の脱毛には利用できますが、皮膚内にメラニンの多い黄色人種には向いていないとされています。表皮のメラニンへの吸収が強く、表皮が熱傷を起こしてしますからです。また、照射時間を長く取ることが技術的に難しいとされています。

アレキサンドレーザーはアレキサンドライトとよばれる宝石を使用したレーザーです。
1996年にAndersonらが発表した理論に適合するレーザーとしてCynosure社は、アレキサンドライトレーザーを使用したレーザー装置(LPIR)を開発しました。現在でも同社のアレキサンドレーザーを使用している施設は多くあります。その後、Candela社が開発した「GentleASE」はレーザーと一緒に冷却ガスを発射することで、皮膚を冷却する方式を採っています。痛みが少なく、評価も高いのですが、パチッという音が出るので、人によっては怖いと感じることもあるようです。痛みは輪ゴムで弾かれたような感じです。冷却ジェルを肌に塗るのに抵抗がある人にはこの空冷ガスの方がよいかもしれません。

アレキサンドライトレーザーの波長は755nm(ナノメートル)です。GentleASEは2000年6月にアメリカFDAから、あらゆるスキンタイプに適した永久減耗の認可を受けています。


  

脱毛用のレーザー②

1998年にStar medical社がダイオードレーザーを使用した脱毛レーザー装置(Light Sheer)を開発しました。接触型の冷却装置により安全性と十分な照射時間を確保しています。

このレーザーは半導体を使用したレーザーで、小型で効率的な特性から、電子工学の分野で良く利用されています。波長は810nm(ナノメートル)です。Light Sheerは1999年4月にアメリカFDAからあらゆるスキンタイプに適した永久減耗の認可を受けています。表皮のメラニンへの吸収という点では、ダイオードレーザーの方が、日焼けした肌や色素沈着の多い肌に対してもより広く適応出来ると言われています。

Light sheerは皮膚に直接装置を押し付けることで、レーザー照射と同時に冷却するという方式を採っています。肌にジェルを塗り、冷却装置を接触させるので、冷却効率の優位性が言われますが、患者としては快適さに欠ける、という意見もあるようです。

痛みは針で刺されたような、チクッとする痛みで人によってはこの痛みが嫌な人もいるでしょう。

  

脱毛用のレーザー③

ダイオードレーザーは初期のアレキサンドライトレーザーに比べて、痛みや効果の面でやや優れていたこともあり、ダイオードレーザーの優位性を説く人もいます。
しかし、実際にはレーザー自体の違いというよりは、装置や構造の違いと考えるべきかもしれません。互いにどちらが優れているとは言い切れないのです。脱毛効果に関しては適切な使用をしていれば、それ程差はないはずです。

さらにYAGレーザーを使用したレーザー装置も開発されています。波長は1064nm(ナノメートル)です。YAGレーザーはルビーレーザー、アレキサンドライトレーザー、ダイオードレーザーに比べて波長が長く、メラニンへの吸収率が低く、日焼けした肌などでも安全性が高いと言われています。しかし、日本人に脱毛効果が十分に得られるかどうか、症例が少ないため、よく分かっていません。

ロングパルスYAGレーザーは、余分なダメージを避けるため、また麻酔の効果も兼ねて、冷凍療法用の機械を用いて-25℃の冷気を当てながらレーザーを照射し、毛根に効率よく熱ダメージを与えます。